■ 医療用大麻 (Medical Cannabis, Medical Marijuana)

★ 【大麻医療について】


大麻治療とは、大麻に含まれるテトラヒドロカンナビノール (THC) やその他のカンナビノイド(CBD)や、これに類似した作用の合成カンナビノイドを用いた生薬療法です。
鎮痛、沈静、催眠、食欲増進、抗がん、眼圧の緩和、嘔吐の抑制など作用があり、身体が産生する(内因性カンナビノイド)は全身にわたって作用しているため、その作用を代替する大麻の適応症は多岐にわたります。
カンナビノイドを含有する薬は、特定のまれな型のてんかん、がん化学療法に伴う吐き気と嘔吐、HIV/AIDSに伴う食欲不振と体重減少の治療、さらに、慢性疼痛および多発性硬化症の症状に有益性(ベネフィット)があると示唆するエビデンスもあります。

▼ 大麻治療の対象となる症状

  • 慢性的な痛み
  • 体重管理
  • 糖尿病予防
  • うつ病
  • 自閉症
  • てんかん
  • 注意欠陥障害
  • ADHD
  • 緑内障
  • 骨折
  • 不安
  • アルツハイマー
  • 関節症
  • トラウマ
  • 多発性硬化症
  • C型肝炎
  • 炎症性腸疾患
  • パーキンソン病
  • アルコール中毒

★ 【大麻医療の歴史】


大麻と言うと、嗜好性の大麻の乱用や、反社会的勢力の資金源となるビジネスとして、画一的に「麻薬」という負のイメージを押し付けられてきました。しかし歴史的には、「大麻=悪」との評価は、100年も歴史がありません。古代の文献を紐解くと、中国、インド、エジプト、ギリシャ、洋の東西を問わず、大麻が、制吐剤、抗てんかん薬、抗炎症薬、鎮痛剤そして解熱剤に使用する薬として利用されていることが広く知られています。

約50年前となる1970年代のアメリカにおいて、ニクソン大統領が「ウォー・オン・ドラッグス(ドラッグ戦争)」という一大キャンペーンを張り、ヘロインなどのハードドラッグのみならず、大麻も目の敵にされて積極的な摘発が奨励したことが世界に広まったと言われています。しかし、そのアメリカにおいても、医療現場において、大麻に対する科学的・医学的検証が積み上げられた結果、医療用途や心身の健康をもたらす存在として否定しがたい存在となり、再評価を余儀なくされております。

評価が変わったからと言って、嗜好性に注目した大麻の乱用、反社会的集団の資金源としての大麻ビジネス等を肯定しているわけではありません。大麻の医療効果を感じ、深刻な疾患を抱えた患者から、医療使用合法化の声が上がり、それが意見の束となった結果、現在ではアメリカのいくつかの州で医療大麻が合法化されています。もちろん、政府にとっては、公的に大麻の生産や販売を管理することで、闇市場やそれにまつわる犯罪を撲滅しようとする政策意図ではありますが、医療用大麻に対する評価とも言えるでしょう。更に、これが、ドラッグに否定できな国家であるアジア圏にも波及しました。特にタイでは、伝統医療の再評価により、2020年には合法化され、早くも末期がん患者に対する治療など、医療現場の中で摂り入れられています。

2020年、世界保健機関は医療利用のための証拠と危険性の推定の誤りを見いだし、2020年、最も危険という条約の分類から大麻が削除されることが決定し(大麻の国際規制の格下げ)、医療利用の道が開かれ科学研究を推進する可能性があると公表しています。

★ 【大麻の効能】


医療大麻の効能は非常に多岐にわたりますが、そのいくつか紹介致します。


★ [抗不安作用]


ストレス社会である現代は、うつ病や不安障害などを抱える人が急増しています。うつ病や不安障害は、脳内にある感情をコントロールする役割を持つセロトニンの分泌量がストレスによって低下することで起こります。従来の治療では薬物によって脳内のセロトニン量を増加させ、抗不安作用を発揮しますが、継続的に利用すると副作用も大きくなってしまいます。しかし、カンナビジオール (CBD) は脳のセロトニン受容体に直接働きかけるので、従来の治療法よりもすぐに抗不安作用を発揮し、副作用もほとんどありません。 もちろん健常者でも利用できるので、うつ病まではいかなくてもストレスを抱えた時に利用すると、不安が少なくなってリラックス効果を得ることができます。


★ [快眠作用]


睡眠をとると、「レム睡眠」と呼ばれる浅い睡眠と「ノンレム睡眠」と呼ばれる深い睡眠を交互に繰り返します。レム睡眠では身体は休んでいるのですが、脳は活発に動いているような状態。脳は休んでいないので、疲れはとれづらいのです。一方、ノンレム睡眠は脳も休んでいるため、疲れもとれやすくなります。CBDはレム睡眠をブロックする効果があるので、摂取するとレム睡眠が短くなり、ノンレム睡眠を長くなるので疲れがよりとれやすくなります。


★ [食欲増進]


テトラヒドロカンナビノール (THC)は脳の視床下部の受容体と結合し、グレリンという空腹を感じるホルモンを放出することが研究からわかっています。そのため、がん治療などの副作用で食欲不振になっている患者にテトラヒドロカンナビノール (THC)を摂取させることで、食欲増進を促し体力回復に努めることができるとの研究があります。


★ [制吐作用]


抗がん剤などは副作用で吐き気をもたらすことが多く、食欲不振にもつながります。テトラヒドロカンナビノール (THC)は吐き気を抑える効果も期待できるので、摂取することで抗がん剤の副作用を抑えることも可能です。